『南齊書』は南北朝時代の「齊」(西暦四七九年〜五〇二年)の歴史書である。梁の蕭子顕(西暦四八七年〜五三七年)によって編纂された。倭についてはしごくあっさりと触れているだけである。
倭國在帶方東南大海島中漢末以來立女王土俗已見前史建元元年進新除使持節都督倭新羅任那加羅秦韓六國諸軍事安東大將軍倭王武號爲鎮東大將軍
倭國は帶方東南の大海、島中に在り。漢末以來女王を立つ。土俗已に前史に見ゆ。建元元年、使持節都督倭新羅任那加羅秦韓六國諸軍事安東大將軍倭王武を進めて新たに除し、號して鎮東大將軍と爲す。
倭国は帯方の東南にある大海島の中にある。後漢末以来、女王を立てていた。その風俗はこれまでの正史に記載されている。建元元年(西暦四七九年)、 使持節・都督倭新羅任那加羅秦韓六國諸軍事・安東大將軍・倭王武を改めて叙任し、号して鎮東大將軍とした。
『宋書』夷蠻伝倭國条の最後に「詔除武使持節都督倭新羅任那加羅秦韓慕韓六國諸軍事安東大將軍倭王」とあった。齊は宋から禅譲を受けて開かれた王朝なので、同じ官職に改めて任命したのである。任命したということはもちろん朝貢があったということであり、倭王武が武辺一辺倒ではなく、外交にも機敏であったことが窺える。